🔔以下の作品はリンクページを参照してください
「f植物園の巣穴」「椿宿の辺りに」
「家守綺譚」「冬虫夏草」「村田エフェンディ滞土録」
「からくりからくさ」
海うそ
📱電子書籍:岩波書店(2018年9月20日配信)文庫本:岩波書店(2018年4月17日発行)
単行本:岩波書店(2014年4月9日発行)

海うそ。これだけは確かに、昔のままに在った。
昭和の初め、南九州の遅島へ調査にやって来た研究者、秋野は、かつて修験道のために開かれた島であったことを知り、その寺院の遺構に惹かれる。修行僧の残した文書を調べ、自然豊かな島を歩いて探索する。作品の背景
遅島そのものでなく紫雲山のモデルなら、強いていえば、北薩の紫尾山でしょうか。あの一帯は江戸末期まで西国高野山といわれ、多い時で12坊もの寺院があったらしいのです。遅島は、この山をそのまま西の海上の甑島の辺りにスライドさせたイメージです。
南日本新聞(2014年6月6日)インタビュー
雪と珊瑚と
文庫本:KADOKAWA(2015年6月25日発行)単行本:角川書店(2012年4月30日発行)
初出:「野性時代」角川書店(2010年9月号~2012年1月号)

食べたものが、そのままその人の元気に繋がるような、そういう「食」を仕事にしたい。母と子の愛と憎しみを抱えたシングルマザーの生きる力は、涙を幸せに変えられる。
21歳の珊瑚は離婚し、生まれたばかりの赤ん坊の雪を抱えて途方に暮れていた。生きることは、食べていくこと、働いていくこと。やがて料理へと関心が向いていく。育児を手助けしてくれるくららや周囲の人に応援されながら、カフェと惣菜の店を開くことに奮闘する。💬連載時のタイトルは「雪と珊瑚」
✅「台所で」番外編と料理レシピ
ピスタチオ
文庫本:筑摩書房(2014年11月10日発行)単行本:筑摩書房(2010年10月10日発行)
初出:「ちくま」 筑摩書房(2008年5月号~2010年6月号)

「ダバ」とは、「ジンナジュ」とは何か?
棚はウガンダへ導かれたのか。
翠は出版社を辞めて棚というペンネームでライターの仕事をしていた。飼い犬のマースが腫瘍を取る手術を無事に終えてひと安心したところに、以前アフリカで知り合い亡くなった片山海里の本を読んで、「ダバ」がマースの症状と似ていることや、洪水の民話にも関係していることに気づく。棚はウガンダ(アフリカ)での取材旅行を兼ねて、謎の解明のため呪術医に会いに行く。月と潮騒
📱電子書籍(作品集版):新潮社(2022年5月27日配信)単行本:『丹生都比売 梨木香歩作品集』 新潮社(2014年9月30日発行)
初出:「母の友」2008年11月号/666号 福音館書店

ザー。シュワシュワシュワ。フー
古い冷蔵庫をエアコン代わりにして、戸を開けっ放しにしたら、潮騒の音がした。トウネンの耳
📱電子書籍(作品集版):新潮社(2022年5月27日配信)単行本:『丹生都比売 梨木香歩作品集』 新潮社(2014年9月30日発行)
初出:「たいせつな風景」9号 神奈川県立近代美術館(2008年3月発行)
トウネンの、耳はどこにあるのだろう
芳枝は十二年前に亡くなった夫のつぶやいた言葉を思い出し、図鑑で調べようとしたら、挟まっていた何かの押し葉を見つけた。💬トウネン――チドリに近いシギで、大きさはスズメくらい
カコの話
📱電子書籍(作品集版):新潮社(2022年5月27日配信)単行本:『丹生都比売 梨木香歩作品集』 新潮社(2014年9月30日発行)
初出:朝日新聞/大阪版 2005年9月1日、8日、15日、22日(夕刊)
私があなたのカコです
昔小学校の教師をしていた老人が公園の池に生息する「カコ」を見つける。✅高校教科書に収録 平成30年度改訂「明解現代文B」改訂版(三省堂)
本棚にならぶ
📱電子書籍(作品集版):新潮社(2022年5月27日配信)📱電子書籍:「本からはじまる物語」 KADOKAWA(2022年3月23日配信)
文庫本:「本からはじまる物語」 KADOKAWA(2022年3月発行)
単行本:『丹生都比売 梨木香歩作品集』 新潮社(2014年9月30日発行)
単行本:「本からはじまる物語」 メディアパル(2007年12月発行)
初出:「しゅっぱんフォーラム」2007年3~4月号 トーハン
小さな本屋の本棚で
私は壁やものにぶつかると体のその部分を失ってしまう。旅行鞄のなかから
📱電子書籍(作品集版):新潮社(2022年5月27日配信)単行本:『丹生都比売 梨木香歩作品集』 新潮社(2014年9月30日発行)
初出:2006年(未発表)
あ、ほら、ほら何か出ていますよ
叔父から譲り受けた旅行鞄を提げて歩いていたら、見知らぬ女性から声を掛けられた。コート
📱電子書籍(作品集版):新潮社(2022年5月27日配信)単行本:『丹生都比売 梨木香歩作品集』 新潮社(2014年9月30日発行)
初出:2005年(未発表)
ロシアの入れ子人形のよう
冬場のコートは、姉とおそろいの、落ち着いた色合いのピンクだった。✅2008年、京都大学の朗読会で発表
✅高校教科書に収録 平成29年度「国語総合」改訂版 現代文編(大修館書店)
🔗関連作品 『やがて満ちてくる光の』収録「お下がりについて」
ハクガン異聞
📱電子書籍(作品集版):新潮社(2022年5月27日配信)単行本:『丹生都比売 梨木香歩作品集』 新潮社(2014年9月30日発行)
初出:「ミセス」2011年2月号 文化出版局
聴こえるは啼き交わすハクガンの声
霧の向こうで潮騒のように繰り返す
ピアノ調律師の山崎は顧客訪問の帰り道、道に迷って山の中の一軒家に辿り着いた。そこには不思議な婦人が住んでいた。💬ハクガン(スノー・グース)――全体に白く、初列風切羽だけが黒い。主にアメリカ大陸、シベリア等で渡りをする。
沼地のある森を抜けて
📱電子書籍(新潮文庫版):新潮社(2022年5月27日配信)文庫本:新潮社(2008年12月1日発行)
単行本:新潮社(2005年8月30日発行)

ぬか床を島へ返しに行く
久美は叔母が死んで、先祖伝来のぬか床を世話することになった。そのぬか床は何と、呻くし、卵が現れる。いったい何が起こっているのか? 酵母研究者の風野さんと共に、ぬか床由来の故郷の島を訪れる。✅冒頭の章「フリオのために」 初出:「小説新潮」2003年6月号
その他
ナイティンゲールの梟
🔔書き下ろしを加えて刊行予定「考える人」2015年夏号~2016年冬号(新潮社)
シロフクロウ@多摩動物公園
ナイティンゲールの名前が、遠い日の友の記憶を呼び覚ます
- 水辺をどう守るかという話
- 風景に小舟が入っていくことと、完全性についての話
- 風景の調整と見守りについての話
主人公・阿方由記子(あがたゆきこ)は、若かりし頃、英国のオークァム・ウォーターという貯水池周辺の環境を保護するための団体で、ボランティア・スタッフとして活動していました。
今から二十年ほど前、阿方はある市民団体の招待で、英国の湖とそこにかかわる人々についての講演をすることになりました。講演を終えた後、聴衆のひとりからある絵本を手渡されます。その絵を描いていたのは、偶然にもかつて同じ「塾」の同窓生で、絵本を手渡したのはその同窓生の姉であり、絵本の著者でもある人物でした。
後日、阿方はその姉に連絡を取ります。画家である弟の消息などを話しているうちに「ナイティンゲール」の名前が出て、阿方はさらなる運命のようなものを感じることになります。
阿方にとって「ナイティンゲール」は、かつての懐かしい思い出に触れたり、〈日常をいかに深く生きるか〉という課題を考えたりするときに外せない、大きな意味をもつ名前なのです。キーワードは「nursing」。園芸用語の「養生」も、看護する行為も英語では同じです。
「ナイティンゲール」がいったいどういう人物だったのかという謎を少しずつときほぐしながら、主人公とその仲間たち、そして英国で見た豊かなる自然とのかかわりを紡いでいく、梨木さんの意欲作。
「Webでも考える人」より抜粋
きみにならびて野にたてば
🔔刊行予定「本の旅人」角川書店
2012年10月号~2015年11月号(2013年11月号~2014年1月号、2014年7月号~2015年1月、2015年7月号は休載)

私が友 保阪嘉内、私が友 保阪嘉内、我を棄てるな
ある女性詩人が、宮沢賢治と彼の学生時代からの友である保阪嘉内との友情に、影響を受けた人たちを探求していく。菅原千恵子著の「宮沢賢治の青春」という本に感銘を受けたり、「UR.」という雑誌を取りまとめ、希少な同人誌「アザリア創刊号」を持ち逃げした行方不明の謎の人物を探したり、保阪嘉内の遺族を訪ねたり。宮沢賢治の足跡を辿って、サハリンへ旅することも…。- プロローグ
- 『UR.』に出会った頃
- 銀漢ヲ行ク彗星ハ
- 岩手山への道
- 『宮沢賢治の青春』に出会った頃
- 『宮沢賢治の青春』 アザリアの頃
- 岩手山登山
- 『宮沢賢治の青春』 アザリアの頃
- ケベックの風
- 風が山から
- 『宮沢賢治の青春』 アザリアの頃
- 嘉内の退学・賢治の卒業
- 韮崎
- 林昇順
- 嘉内・母の死
- タイム・リミット
- 国柱会
- 大正十年七月十八日
- 七月十八日以後
- サハリン
- 「冬のスケッチ」に滲む七月十八日以後
- サハリン
- とし子の修羅
- サハリン
- 『銀河鉄道の夜』・「カンパネルラ」の消滅
- 『銀河鉄道の夜』・「教え諭す博士」の消滅・「カンパネルラの父」の出現
- それぞれの青春 林昇順
- 林昇順 連れて行かれたダァリヤ
- それぞれの青春 菅原千恵子
- 保阪庸夫氏の青春
💬連載当初はフィクションとノンフィクションをないまぜにした表現スタイルだったが、途中からノンフィクションに重点を置くようになった。
参考文献:「宮沢賢治の青春」菅原智恵子著(文庫本:角川書店/単行本:宝島社)
沿岸ホテル
「IMA」2015 Summer(Vol.12) アマナホ-ルディングスホテルに棲む、カニとエビのふたごの話
ホテルは沿岸流の流れる突き当たりの岸壁にあり、客は内陸から来たものたちと海から来たものたちだった。十六年前のある大潮の夜、泣いているふたごをオーナーが見つけて、ウツボと呼ばれる女性が世話をする。兄はカニ、弟はエビと呼ばれ、ホテルに自然に棲むことになる。十六になった時、カニは内陸の群れとともに内陸へ、エビは海の群れとともに海へ向かった。しかし、再び帰って来る。鴉払いの夜
「野性時代」2006年12月号 角川書店鴉にまつわる掌篇
一、石工の妻は夫から十勝石(黒曜石)を貰い、壊れた冷蔵庫の中に入れたが修理のときに落ちてきて傷を負ってしまう。二、学者の妻は知人から薔薇を贈られ、踏み石の上に捨てたら自然にドライフラワーになったが染みが付いた。
三、村外れの森に群れる鴉に困っていた村人たちの前に、鴉払いをしようという男が現れたので、鴉避けを依頼すると…。