炉辺の風おと/歌わないキビタキ/小さな神のいるところ

『炉辺の風おと』シリーズは、八ヶ岳に山小屋を構えた梨木香歩さんが、自然に囲まれた山小屋の素朴な明け暮れを記録したいと試みたエッセイです。炉辺を含む小屋周りのこと、鳥のこと、植物のこと、小動物のことを中心に、時事問題やご自身のこと、ご家族のことなどにも触れています。


これまで三冊が書籍化されています。

  • 「炉辺の風おと」(2020年刊)
  • 「歌わないキビタキ 山庭の自然誌」(2023年刊)
  • 「小さな神のいるところ」(2025年刊)

その他に関連作品として、川嶋みどりさんとの往復書簡「『秘そやかに進んでいくこと』と私たちの責任」オン・ナーシング(2023年12月~連載中)があります。





Vol.1 炉辺の風おと

ろへんのかぜおと

電子書籍:毎日新聞出版(2023年11月20日配信)
文庫本:毎日新聞出版(2023年10月30日発行)
単行本:毎日新聞出版(2020年9月25日発行)
初出:毎日新聞「日曜くらぶ」2018年4月1日~2020年6月21日(113回)

山小屋での簡素で豊かな生活
自然との共生で感じたこと
焚き火のできる暖炉のある小屋作り
コロナ禍の世界で考えたこと

山の深みに届いた生活の経験―山の抱え持つ深さと測り合うように時間が流れる生活。孤独が人間存在を彫り上げていくような生活、ということだろうか。そういう時間が、自分の人生に、たとえ傍流としてでも流れてくれればいいと思う。

第一章 山小屋暮らし
山の深みに届く生活(4)
八ケ岳の山小屋を入手した経緯と山で生活すること

火のある風景(4)
英国の亡きウェスト夫人の思い出とアイルランドの漁師小屋のこと
🔗『私たちの星で』所収「あれから六万年続いたさすらいが終わり、そして新しい旅へ」『春になったら苺を摘みに』『ぐるりのこと』と関連

遅い春・早い初夏(4)
春の八ケ岳に咲く花や訪れる鳥たち、ドイツの旅のこと

風の来る道(9)
新しい小屋作りの試みと忘れ難い家のこと
🔗『やがて満ちてくる光の』所収「家の渡り」と関連

ストーブの話(4)
猛暑に焚いたストーブと煙突掃除の話
📖『アイルランド冬物語』(アリス・テイラー)

長く使われるもの(5)
プラスチックなどの生活の道具、言葉、住まいのこと
🔗『風と双眼鏡、膝掛け毛布』所収「是川」と関連

第二章 巡りゆくいのち
深まっていくもの(4)
薪ストーブの火熾しとキノコのこと

更新される庭(5)
山の庭と植物のこと
🔗『わたしたちのたねまき』と関連
💬それからブルーベリーの青紫がしんとした林床を埋め尽くし、という記述ですが、“ブルーベリー”ではなく、“ブルーベル”が正しいと思われます。

冬ごもりの気持ち(5)
冬ごもりの準備の気持ちと「徒然(とぜん)」、病のこと

養生のこと(5)
建築、ガーデニング、心身などの「養生」と暖炉の完成

南の風(8)
沖縄(佐喜眞美術館、辺野古、読谷村など)を訪れたこと。石敢當(いしがんとう)と「あくまき」
🔗『風と双眼鏡、膝掛け毛布』所収「沖縄の地名」と関連
🔗『私たちの星で』所収「繋がりゆくもの、繋いでゆくもの」と関連

第三章 鳥の食事箱
野生と付き合う(5)
山庭に来る野鳥に餌を与えてみたこと

リスのこと(4)
山庭に来るリス、ビアトリクス・ポターのこと

植物と仲良くなり、ときどき食べる(6)
新しくできた離れ(アネックス)と食べられる植物のこと
📖『黒ケ丘の上で』(ブルース・チャトウィン)
📖『大英帝国は大食らい』(リジー・コリンガム)

時間が止まり(3)
フリーズしたリス、黒いアゲハ、クリスマスローズのこと
#神沢利子
🔗『夏の朝』と関連

第四章 いのちの火を絶やさないように
滲み出る本質(5)
茸の見分け、ゴジュウカラ、松脂、ウバユリ、美容院のこと
🔗『家守綺譚』と関連
🔗『不思議な羅針盤』所収「五感の閉じ方・開き方」と関連

滞りが生まれてしまう(4)
思考や身体、水の流れの滞りを考えること
#川平和美
🔗『不思議な羅針盤』所収「変えていく、変わっていく」と関連

少しずつ、育てる(5)
害虫という概念、一人できげんよくしている才能、難民の医療問題
🔗『ヤービの深い秋』と関連

第五章 遠い山脈
秘そやかに進んでいくこと(5)
父親の介護と死、ナイティンゲールへの関心

日常が甦る(4)
病院の待合室での出来事、けせんの木の香り、フェリーの船室、愛用のティーポット
#土井善晴

遠い山脈(5)
非常時と民主主義という山脈(やまなみ)
📖『他山の石』(桐生悠々)
📖『ほどくよどっこい ほころべよいしょ 暗闇へ梢をのばすくにつくり 百姓は想う 天と地の間にて』(伊藤晃)

生命は今もどこかで(5)
コロナ禍と育む生命(いのち)
📖『セカンドハンドの時代』(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ)

右往左往のただなかに在ること(5)
コロナ禍での右往左往
📖『日本アルプスのライチョウ』(水越武)新潮社
📖『パイオニア・ウーマン』(ジョアナ・ストラットン)

あとがき
✅文庫本には文庫版あとがきとして――『炉辺の風おと』その後を収録

電子版オリジナル
✅電子書籍には新聞連載時の小沢さかえさんによる全挿絵をオールカラーで収録


インタビュー

「著者の窓」第1回 小学館
Web:2020年12月4日配信 小説丸(横書き版)
「本の窓」2020年12月号 小学館
Web:2020年11月20日配信 小説丸(縦書き版)



キビタキ(写真AC)

Vol.2 歌わないキビタキ 山庭の自然誌

うたわないきびたき やまにわのしぜんし

単行本:毎日新聞出版(2023年9月30日発行)
初出:<炉辺の風おと>毎日新聞「日曜くらぶ」2020年6月28日~2020年9月27日(14回)、<新・炉辺の風おと>毎日新聞出版「サンデー毎日」2021年4月11日号~2023年3月26日号(88回)

山庭に咲く花、食事箱に来る鳥たち、病との闘い

外界に忙しなく暗雲が垂れ込め続けているような時代には、「飛ぶことを知っている魂」でも、飛ぶことを躊躇う。飛び方がわからなくなる。飛ばなくてすむのなら、誰も苦労はしないが、生きるために飛ぶことが必要なのなら、飛び立つより他に道はない。ただ、今を、翼を整備するための―入念な―準備期間と見なすことはできる。焦燥や不安も、経験値にしてしまい込む技を身につけながら。

🔖山小屋 🔖山庭 🔖鳥 🔖動物 🔖植物 🔖キノコ 🔖闘病 🔖母親の介護 🔖実家の引っ越し 🔖コロナ禍 🔖オリンピック 🔖ウクライナ

<炉辺の風おと>

毎日新聞「日曜くらぶ」2020年6月28日~2020年9月27日(14回)

第一章 2020年6月―9月
個性は消えない(5)
シジュウカラの雛の巣立ち。個性(らしさ)と認知症を患った友人のこと
📖『女帝・小池百合子』(石井妙子)
📖『セカンドブレイン』(マイケル・D・ガーション)
📖『第三の脳』(傳田光洋)

バランスを視ること(5)
生態系のバランスの崩れと世の中の変化。回天のこと
📖『特攻と日本軍兵士』(岩井忠正、岩井忠熊)毎日新聞出版
📖『特攻 最後の証言』(岩井忠正、岩井忠熊)河出書房新社
✅「飛ぶことを知っている魂」高校教科書に収録 令和5年度「文学国語」「新編 文学国語」(大修館書店)

うつくしい保険(4)
遺伝子操作した蚊を放つ計画への懸念。予定のわからないスケジュール。自然にとっての「付け焼き刃」は人間の介入。伝えたい言葉。
🔗『f植物園の巣穴』と関連
#熊井明子
#片山廣子
#深尾須磨子

力のある言葉を、ひとへの励ましとしてよく使う。経験上、口頭で伝えるときは、すぐに出処も明らかにしたほうが、力強く伝わる。
(中略)「勇気を持って治療に向かってください」とあった。勇気を持って、と、私は何度も呟き、以後、この言葉とともに生きてきた。そして人生の様々な局面で、その言葉を必要としているひとに話してきた。


<新・炉辺の風おと>

毎日新聞出版「サンデー毎日」2021年4月11日号~2023年3月26日号(88回)

第二章 2021年4月―8月
鉄人の日々(7)1~7
化学療法と副作用、骨折と牛乳のこと
📖『アナグマ国へ』(パトリック・バーカム)
📖『乳がんと牛乳』(ジェイン・プラント)
エコノミストOnlineは1~3回を試し読みできます。

危機的な局面に出会うたび、いちいち悲嘆に暮れる余裕はない。状況から必要な情報だけを読み取り、判断し、次へ繋げていく行動をとる。患者を生きるということは、当事者を生きるということで、やってくる波を乗り切ることは、誰にも代わってもらえない。


群れにいると見えないこと(5)8~12
八ヶ岳にやって来るアトリ、回天に搭乗した和田稔のこと
📖『わだつみのこえ消えることなく』(和田稔)
📖『芹沢光治良文学館 短篇集 死者との対話』
✅群れにいるとみえないこと/3~5―『ここに物語が』に収録

半返し縫いの日々(6)13~18
山庭に咲く野草と薪ストーブ、自分というもの、コガラ
#カール・ベンクス
#池田潔
📖『第三の随筆』(池田潔)

アマチュアの心(3)19~21
剣道がオリンピック種目でない理由、文庫化される地名の本、蝶好きの人
#森本あんり
📖『反知性主義』(森本あんり)
🔗『風と双眼鏡、膝掛け毛布』と関連

第三章 2021年9月―12月
長い間、気づかずにいたこと(3)22~24
戦時中の京都の空襲、波乱万丈の人生を歩んだ日本人たち、家の前を掃くこと
📖『南島に輝く女王 三輪ヒデ』(倉沢愛子)
📖『大航海時代の日本人奴隷』(ルシオ・デ・ソウザ/岡美穂子)

自然界では一つとして同じ存在はないということ(6)25~30
初秋の公園の草花と鵜飼、山庭に生えたキノコ、誰かに採られたキノコ、キノコ用ナイフと下拵え、キジバトの巣作り、英国の友人の夢
📖『南日本の地名』(小川亥三郎)

森の道 人の道(7)31~37
シカ、アオダイショウ、アズマヒキガエル、ウグイス、ゴイサギなどの道。英国の生垣

第四章 2022年1月―4月
晩秋と初冬の間(3)38~40
コガラ、キバナノヤマオダマキ、コンポスト

敗者の明日(4)41~44
ヒガラと牛脂、サクラマスとヤマメ、リスのクルミ割り
📖『リスの生態学』(田村典子)

準備はできつつある(4)45~48
屋根の修繕、カエデの樹液、読者の手紙から、ウクライナ情勢

雪が融け 水が温み(5)49~53
ウクライナの民話絵本、本は大事、はっきり見えるもの、強制移住、桜と低温刺激
📖『てぶくろ』(エウゲーニー・M・ラチョフ絵・うちだりさこ訳 福音館書店)
📖『コーカサスの金色の雲』(プリスターフキン)
📖『昼の家、夜の家』(オルガ・トカルチュク)
📖『パンと野いちご』(山崎佳代子)
#猪谷六合雄
🔗『風と双眼鏡、膝掛け毛布』所収「大洞」と関連

第五章 2022年5月―9月
失ったものと得たもの(6)54~59
魚の移動販売、山ウド、新東名と琵琶湖行き、ウクライナの人びと、霧島の山小屋とアカショウビン、「夏は来ぬ」とウツギとホトトギス

滴るように伝わる(5)60~64
亡き編集者と新しい命、奥永源寺の政所茶、七十年ものの柴と新しい男性性、ヒメネズミ、安倍元総理銃撃事件
🔗『冬虫夏草』と関連

目的は、「変化」そのもの、なのか(旧題:あと少し、もう少し)(6)65~70
鳥と人間の子育て、枇杷の実とアナグマ、母親の介護とトキワネム、アナグマと弱者、手放すことになった実家の庭のクスノキなどの樹木

第六章 2022年10月―2023年3月
歌わないキビタキ(6)71~76
食事箱にやって来たミソサザイとアカゲラ、指のトゲと母親との喧嘩、雨上がりの山のキノコ、どんぐりと解体、エゾハリタケと寄生されたサカキ、オオバヤドリギの寄生
📖『奥入瀬渓流 きのこハンドブック 春―初夏篇』
📖『アナグマ国へ』(パトリック・バーカム)
#ジョナサン・マッゴーワン

秋はかなしき(5)77~81
雄シカの啼き声と山姥、炎を見ることと神聖なもの、シロイワヤギの闘い方、ウェスト夫人とホットウォーター・ボトル

あるべきようは(7)82~88
ヒメネズミの捕獲、エリマキシギのメス擬態型オス、相手の存在
📖『ゾウの時間 ネズミの時間』
📖『オスとは何で、メスとは何か? 「性スペクトラム」という最前線』(諸橋憲一郎)
📖『ウマと話すための7つのひみつ』(河田桟)
#ジェラルド・ダレル

あとがき



ヤブミョウガ(東京・多摩市)

Vol.3 小さな神のいるところ

ちいさなかみのいるところ

単行本:毎日新聞出版(2025年9月25日発行)
初出:<新・炉辺の風おと>毎日新聞出版「サンデー毎日」2023年4月2日号~2025年6月15・22日合併号(90回)

小さな神様たちが消えていく

その地域だけによく見られる植物、というのは土着の神様たちのようなものだと思う。東京で私の住む地域に圧倒的に多いのはヤブミョウガだし、八ヶ岳ではマルバダケブキ。そういうものが木陰で群生をつくり、その上に木漏れ日が差しているのを見ると、荘厳な気持ちになる。
「日本の底力」と呼ばれるものは、経済力や技術力ばかりではなく、そういう消えていこうとしている小さな神様たちそのものも、そうなのではないだろうか。小さな神様たちがどんどん消えていったら、ほんとうにどうなるのだろう。神様たちの居場所を、引っ越し先を、つくらな ければならない。では、どこに?

🔖山小屋 🔖山庭 🔖鳥 🔖動物 🔖植物 🔖キノコ 🔖母親のこと 🔖加藤幸子 🔖環境問題 🔖香港


第一章 眠っている種
時間をかけて、取り戻す(7)89~95
ゴジュウカラのバードストライク、醤油職人と桶職人、アトリと群れの集結地、ウラジロモミの鹿害と金網の設置、ムジナモの発見と牧野記念庭園のクマガイソウ、カヤックを始めた動機と種
📖『巨大おけを絶やすな!』(竹内早希子 岩波ジュニア新書)
🔗『水辺にて』と関連

時間薬、というものはあるのだと思う。どんな手酷い目に遭っても、長い時間が経てば、自分を取り戻していく。それまでただ、辛抱強く待てばいいのだ。


何を見ているのか(6)96~101
アミガサタケと渡りをしなくなったジョウビタキ、キビタキ雌の硝子戸への体当たり、アカショウビンと生態系全体から見る野鳥観察、ソウシチョウと入管難民法改正案、サラサドウダンと「目」の細やかさ
#樋口広芳
📖『生命にぎわう青い星―生物の多様性と私たちのくらし』(樋口広芳)

人には見えない場所で(6)102~107
コエゾゼミとセミの分布、ノリウツギだと思い込んでいた名前のわからない木、食事箱にやってくるカワラヒワとキジバト、アカゲラの残忍さ、カワラヒワのマフィアファミリー、カワラヒワの幼鳥

第二章 逡巡
繰り返すのか(4)108~111
ALPS処理汚染水の海洋放出と戦前の空気、関東大震災時の朝鮮人虐殺事件、新聞への失望と無力感
📖『関東大震災 文豪たちの証言』(石井正己編 中公文庫)
#小泉登美、#志賀直哉、佐多稲子、片山廣子、吉野作造

皆この道はいつかきた道と知っていて、一部の人びとは必死でそれを止めようとするのだが、その努力を冷笑しつつひたすら亡国へと突き進む、この勢いは止まらない。どういう自己破壊的ダイナミズムが働いて、こう同じことを繰り返すのか。


藪のなか(6)112~117
ヤブミョウガ、ヤブガラシ、ヤブコウジと国の質、八ヶ岳の紅葉と遺影写真、ドングリの凶作と前の家主Kさん家族の来訪、家霊を感じるとき、「高原の恋」の真相、N子さんの両親への感謝
#中井久夫
🔗『炉辺の風おと』と関連

国々といっしょで、植物にもいろんな質がある。自分の国の質を知っておくことは大事だと、最近しみじみと思う。


冬の群れ(6)118~123
キバシリ、鳥が群れに入るための条件とメリット、カラスが群れになる科学的な事実、カラ類の群れに混じったヒヨドリ、箱根駅伝と水餃子の肌年齢、公園の池にやって来る野鳥への餌やり禁止
#樋口広芳
📖『アナグマ国へ』(パトリック・バーカム)
🔗『不思議な羅針盤』と関連?

第三章 細胞の記憶
わかりたい気持ち(7)124~130
サルと飼い犬のわかりたいこと、飼い犬が鏡の中の自分を見たときの反応、病院で見かけたイソヒヨドリ、某編集者の性別、ヒメオドリコソウとワカケホンセイインコ、メッセンジャーナースと病院との交渉、北原節子の随筆「雨の白馬岳」
#田畑千穂子
🔗『不思議な羅針盤』と関連
🔗『秘そやかに進んでいくこと』と私たちの責任と関連

忖度と思いやり(5)131~135
「思いやり」という忖度を強要する暴力、日本人パックツアー客と外国人観光客、天候不良での飛行機着陸と加藤幸子さんのエール、庭の草木とネコヤナギの挿し木
#加藤幸子

新しい気づき(3)136~138
八ヶ岳の食事箱に来る鳥たちの変化、ムギマキと絵を描くひと、鳥たちの声やミヤマエンレイソウの太古の時間

第四章 秘密の通路
知床岬携帯電話基地局(旧題:知床岬携帯基地局)(3)139~141
梅の凶作と知床岬の携帯基地局建設の懸念、オジロワシと人間、風力発電とバードストライク
#白木彩子
🔗『やがて満ちてくる光の』~「風の道の罠――バードストライク」と関連

もっと豊かに(6)142~147
リーディングドラマ「西の魔女が死んだ」と漫画家・脚本家の事件、教養の持つ「広さ」と「深さ」、タマムシと神話の世界、京都の外国人旅行者とオーバーツーリズム、小さなクモとスズメバチの死骸、食事箱に来る鳥たちの集団と単独の行動
🔗『西の魔女が死んだ』と関連
#生駒里奈、前田美波里、笹部博司
📖『僕の漫画農業日記 昭和31~36年 14歳、農家を継ぐ』(伊藤茂男)
📖『ツンドラの記憶――エスキモーに伝わる古事』(八木清編訳・写真、閑人堂)

生きる力の痕跡(5)148~152
養殖のカンパチの傷跡と若い人、木の「そこ」と「シス」、庭のアカンサス、大根葉の呼び方、ストーブのチェックと家回り
📖『聞き書 〇〇の食事』全50巻(農山漁村文化協会)

フィンランドに「シス」という言葉がある。日本語でいうと、もう死語になった「根性」とか「意地」とかいうものが近いだろうか。人を評するとき、「あの人にはシスがある」というように使う。大切に育てられ、適度に甘やかされ、素直に育った人間にはない、一筋縄ではいかない、簡単には諦めない、不撓不屈の精神の持ち主。「そこ」のことを考えると、「シス」という言葉が浮かぶ。「そこ」を抱えて生きるのは辛そうだ。しかし自分の根っこに、小さな「そこ」があることを自覚するのは、これからを生き抜くために、役立つように思う。


冬に向かう(6)153~158
冬に備えるリスとコガラの行動、ヤスデの大量発生、桜の狂い咲きと加藤幸子さんの遺品整理、加藤幸子さんの人物像と功績、チョウの「引っ掛かり」、一人暮らしと一人旅
#加藤幸子
#エリザベス・キューブラー=ロス
📖『ジーンとともに』(加藤幸子)
🔗『ぐるりのこと』と関連
💬桜の狂い咲きという記述は園芸種の十月桜の可能性があると思われます。

寒くなれば孤独が身にしみることもある。寂しくなったら、自分は今、一人旅の途中なのだ、と思えば、次にやるべきことも見えてくる。


第五章 もうひとつの時間
アジアの天気図(10)159~168
空港の搭乗手続きの変化、旅の仲間と香港行き、死後の世界へ向かう想像力、M+(エムプラス)訪問、その国らしさ、ウォークマンの進化と「個別文化」、海鮮レストランの問答、グオ・ペイのコレクションから見る少女の西洋文化への憧れ、芸術家たちの作品と時代背景
#横山いくこ
#木寺紀雄
#グオ・ペイ
#徐冰(シュービン)
📖『母、アンナ』(ヴェーラ・ポリトコフスカヤ)
🔗『エストニア紀行』と関連

スープのこと(4)169~172
香港で食べた老火湯スープ、八ヶ岳でつくったスジ肉とトマトのスープ、ダイコンスープとベジ出汁、フキノトウのコンソメスープ
📖『香港風味』(野村麻里)平凡社
📖『それからはスープのことばかり考えて暮らした』(吉田篤弘)
🔗『雪と珊瑚と』と関連
🔗『不思議な羅針盤』と関連

行きずりの縁(3)173~175
バスで同乗した老婦人、母の介護への「悔い」と「この方」のため
🔗『秘そやかに進んでいくこと』と私たちの責任と関連

小さな神のいるところ(旧題:小さな神様たちがいる場所)(3)176~178
南九州の「シダ」と小さな神様たち、「真昼の星」と神々の居場所、タンタトウの穴から日中に星を見る
#南方新社
📖『真昼の星への旅』(水越武)
📖『鹿児島の星空ガイド』(西井上剛資著)南方新社
🔗『ここに物語が』と関連
🔗『鳥と雲と薬草袋』と関連

あとがき

💬一部改稿されています。


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