鳥と雲と薬草袋/風と双眼鏡、膝掛け毛布

地名にまつわる葉篇随筆

📱電子書籍(新潮文庫版):新潮社(2022年5月27日配信)
文庫本:新潮社(2021年10月1日発行)
✅二作品の合本版




鳥と雲と薬草袋

単行本:新潮社(2013年3月30日発行)
初出:西日本新聞「連載随筆」(2011年12月13日~2012年2月28日)

地名とは歴史の厚みや地勢的な経験が凝縮されたシンボリックな記号である

薬草袋、というのは、旅の鞄に入れておくごちゃごちゃ袋のこと。アドリア海の小さな島のおばあさんからもらったブーケや旅のメモが入っている。いつか行った土地の名まえ、それにまつわる物語を、鳥と雲の話に合わせて綴ったエッセイ。

タイトルのこと
  • まなざしからついた地名 鶴見 富士見 魚見
  • 文字に倚り掛からない地名 姶良 諏訪 田光 戸畑 由良
  • 消えた地名 京北町 栗野町 稗貫郡 武生
  • 正月らしい地名 松ノ内、月若
  • 新しく生まれた地名 四国中央市 南アルプス市 蒲郡 東近江市 八峰町
  • 温かな地名 日向 日ノ岡 椿泊 小雀 生見
  • 峠についた名まえ 善知鳥峠 星峠 月出峠 冷水峠 杖突峠
  • 岬についた名まえ 宗谷岬 禄剛崎 樫野崎 佐田岬 長崎鼻
  • 谷戸と迫と熊 殿ヶ谷戸 小さな谷戸 水流迫 唐船ヶ迫 熊
  • 晴々とする「バル」 長者原 西都原 新田原 催馬楽
  • いくつもの峠を越えて行く 山越 三太郎越 二之瀬越 牧ノ戸峠
  • 島のもつ名まえ 風早島 甑島列島 ショルタ島
あとがき



風と双眼鏡、膝掛け毛布

単行本:筑摩書房(2020年3月20日発行)
初出:「ちくま」2015年6月号~2019年8月号(2016年10月号休載)全50回 筑摩書房

地名の持つ力が、気分を一新する「風」になりうるように

思い起こされる個人的な経験や、調べられる範囲で知り得た情報、知人の体験談、それこそ風が運んで来たような話、双眼鏡で鳥を観察しに行ったときの経験、カヤックを漕ぎに(浮かびに行くのである、ほんとうは。それで悠長に膝掛け毛布を使う)行った川や湖のこと。

タイトルのこと―始まりの短いあいさつとして

  • 塩の道・三州街道の地名 足助 伊那
  • 塩の道・千国街道の地名 安曇野(保高宿)
  • 塩の道・秋葉街道の地名 御門・政所 相良
  • 塩の道・塩津海道の地名 塩津
  • 北陸道の地名 岩瀬
  • 熊野街道の地名 紀伊長島 尾鷲 八軒屋 布施屋
  • 東海道の地名 大津 石場(大津宿) 矢橋(草津宿) 頓宮(土山宿) 生野(土山宿) 知立(池鯉鮒宿)
  • 日光街道の地名 箱根ヶ崎 雀宮 五十里

  • 大の字のつく地名 大洗 大湊 大曲 大月 大沼 大熊
  • ざわっとする地名 姨捨 毒沢 銭函 花市場 無音 犬挟 シタクカエ
  • 植物系の地名 宿根木 三本木 青梅 麻績 楢葉
  • 湖川の傍にある地名 大洞 海ノ口・海尻 湊・川岸 行方 潮来 子ノ口 犬落瀬 開発・浮気 小河内 丹波山 生保内・広久内
  • アイヌ民族由来の地名 蕪島 種差 是川 母袋子 鮫 星置 鷹栖 熊牛 (かりかん) 安瀬 濃昼 利尻
  • 国境の地名  人里 数馬 猿ヶ京 法師 道志
  • 沖縄の地名 普天間 読谷山 喜名 今帰仁 平良 東風平 富盛
あとがき

✅生野(土山宿)高校教科書に収録 令和5年度「古典探究 古文編」「精選 古典探究」(大修館書店)

訂正『風と双眼鏡、膝掛け毛布』

2020年3月16日刊行の『風と双眼鏡、膝掛け毛布』(梨木香歩、単行本)第1刷に誤りがありました。
198ページ、2段落目
相俣ダムの底に沈み、移転して猿ヶ京温泉となったのは、前段で言及されている笹の湯温泉と湯島温泉であり、この段落で挙げられた温泉名は間違いでした。

【誤】一九五八(昭和三十三)年、赤谷川に相俣ダム建設。ダム湖の底には日中温泉、鶴の湯温泉、入之波温泉、大牧温泉、大塩温泉などが沈み、今の場所に温泉街ごと移動、新しく猿ヶ京温泉とした。

【正】一九五八(昭和三十三)年、赤谷川に相俣ダム建設。ダム湖の底には笹の湯温泉と湯島温泉が沈み、今の場所に温泉街ごと移動、新しく猿ヶ京温泉とした。

✅文庫本は修正済み


特別収録(番外編)

ここは美山と呼ばれる地

webちくま 2020年4月9日配信
初出:「ちくま」2020年4月号 筑摩書房
✅文庫本に収録


文庫本あとがき

「新・炉辺の風おと」アマチュアの心/2(「サンデー毎日」2021年9月5日号)と関連


文庫本解説

薬草袋の効用(吉田篤弘)

「波」2013年4月号 新潮社


地名のイメージマップ



✅書籍には簡易な地図が添付されておおよその位置はわかりますが、さらに詳しく知りたくなりました。文章からリアリティを持てるように、地図にマッピングし、データを可視化してみました。エッセイを読みながら、梨木さんといっしょに旅をしているような気分を味わえたらと思います。

目次の地名だけではなく、文章内の関連場所も含んでいます。
正確な場所が不明瞭な場合はおおよその位置を推定しています。
地図データに準じてますが、間違い等があった場合はご容赦ください。

QooQ