家守綺譚(いえもりきたん)

📱電子書籍(新潮文庫版):新潮社(2022年5月27日配信)
文庫本:新潮社(2006年10月1日発行)
単行本:新潮社(2004年1月30日発行)
家を、守らねばならない。友人の家なのです。
亡き友、高堂の家の守をしている綿貫征四郎は物書きを生業として暮らしていた。湖からの疏水が流れ込む家で死んだはずの高堂と言葉を交わし、犬のゴローと隣のおかみさんの世話になり、サルスベリに懸想をされたり、タヌキに化かされたり、異界の不思議な出来事に邂逅する。✅文庫本は「烏蘞苺記(やぶがらしのき)」を収録

夏から秋にかけて咲く
サルスベリのやつが、おまえに懸想をしている
小さな白サギのコサギ
ミヤマヨメナの園芸種で春に咲く
未の刻(午後二時頃)に咲く睡蓮
ダァリヤという呼び方は宮沢賢治の作品にも出てくる
強い臭気がある
真夏の夜に咲く

秋に色づく
竹の花は60年に一度咲くと言われる
野生のタヌキ@付属自然教育園(東京)
早春、桜の前に咲く
夏から秋にかけて咲く
夏から秋にかけて咲く
ススキなどの根元に寄生する
秋の七草の一つ
秋の七草の一つ
秋の七草の一つ
2013年9月19日@東京
鳥のホトトギスの斑点模様になぞらえた
ノコンギク、ヨメナ、シロヨメナ、ユウガギクなど
悪臭がある
実ではなくムカゴ
雌雄異株
花びらがバラバラに散る。
別名ジャノヒゲ、瑠璃色の実がなる

雪を被った南天
雌雄異株
2月から3月頃に咲く
@稲村ヶ崎(鎌倉)
別名アミガサユリ(編笠百合)
山椒の芽生え
@石神井川(東京)
物語は京都と琵琶湖周辺が舞台になっていることはおおよそ想像できるが、明確な場所は示されていない。あくまで想像に過ぎないが、ポイントを整理し、物語の背景を考察して地図を作成してみた。調べてみると単に地名だけではなく、その土地の風土や歴史・伝説が織り込まれていて奥深いことに気付く。小説はエンターテイメントであるけれど、紀行文学の素地があるからこそ魅力が増している。なお、実際にモデルとなった梨木さんの仕事場は滋賀県守山市にあったという。
物語の舞台
高堂の実家◎様々な位置関係から京都市山科区安朱周辺の可能性が高い。琵琶湖疏水(山科疏水)の分水路が通っている。疏水だけでなく、分水路のあることがポイント。
「山一つ越えたところにある湖」
「家の北側は山になっている。山の裾には湖から引いた疏水が走っている。家の南は田圃だ。その田圃に疏水から用水路が引かれている。その水路の途中が、この家の池になっている」
「ここから南禅寺山麓までは近い」(高堂)
◎安寧寺川というのは架空の名称で、安祥寺川のことと推察する。疏水と立体交差しており、付近にはかつて洋館群があったらしい。
「疏水と交差するところ」
「安寧寺川に沿って洋館がいくつか並んでおり」
和尚の山寺
◎疏水の北側、四ノ宮周辺、小関越えの方角にあったと推察する。具体的な記述がないので位置の特定は難しい。
「疏水の向こうの山寺の和尚の所」
時代背景
◎文中からは明治時代後半の設定ということくらいしか推察できない。琵琶湖第一疏水完成 ⇒ 1890(明治23)年
「疏水の先に電気工場が出来た」 ⇒ 蹴上発電所の運転開始は1891(明治24)年
◎本作品とリンクしている『村田エフェンディ滞土録』を参考にすると詳細を特定できる。
土耳古帝国のエルトゥールル号遭難事件 ⇒ 1890(明治23)年
村田が土耳古帝国留学 ⇒ 1899(明治32)年
村田が帰国 ⇒ 1900(明治33)年
青年トルコ人革命 ⇒ 1908(明治41)年
◎綿貫は村田の留学と同時期に高堂家へ移り住んでいると思われることから、1899(明治32)年~1900(明治33)年頃ということになる。
矛盾点
◎山科駅の場所または時期が矛盾する。旧線にあった旧山科駅は1879(明治12)年開業だが、現在位置より南に離れた場所だった。現在のJR山科駅は1921(大正10)年、京阪山科駅(旧毘沙門道駅)は1912(大正1)年に開業している。
「どの汽車も湖の西岸か東岸かどちらかを通ってくる」
「駅舎の南側は、旧東海道である」
家守綺譚の地図
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冬虫夏草(とうちゅうかそう)

📱電子書籍(新潮文庫版):新潮社(2022年5月27日配信)
文庫本:新潮社(2017年6月1日発行)
単行本:新潮社(2013年10月30日発行)
初出:一部重複
「yom yom」新潮社(vol.1,5,10,14,20,23)
「波」新潮社(2012年6月号~2013年7月号)
ゴローを探しに鈴鹿の山を目指す。
水の道があるのだ。
綿貫征四郎は学生時代の友人、南川(菌類の研究者)から、行方知れずのゴローらしき犬を見かけたと教えられ、天湯川桁命(あめのゆかわけたのみこと)を水神とする愛知川(えちがわ)に沿って鈴鹿の山を目指す。
✅「家守綺譚」の続編

別名オーニソガラム、スター・オブ・ベツレヘム
近似種のハナサナギタケ
紫色が多く、白色は少ない
紫色が多く、白色は少ない
茎の節が黒い
絶滅危惧種
スカビオサの仲間
ダマの実と呼ばれていた
寒菊は総称、これは島寒菊
ツタウルシ(画像なし)
ジニアと呼ぶ方がポピュラー
一般的にはイタドリ(スイバもスカンポと呼ばれる)
黄葉すると甘い香りがする
天狗の羽団扇に似ている
海辺の植物だが、琵琶湖にも分布する
茅はススキ、オギ、チガヤなどの総称
物語の舞台
『冬虫夏草』は鈴鹿の山間を旅する物語。滋賀県東近江市付近が舞台となり、愛知川(えちがわ)に沿って繰り広げられる。『冬虫夏草』は年代に関する記述が一切ないが、綿貫が家守りになってから2~3年めと考えるのが順当と思われる。サラマンドラのエピソードは『村田エフェンディ滞土録』の村田の帰国と関係あるように伺えるが、そうであれば村田の留学期間は1年だったはずなので整合性が合わなくなる。もっとも文中で明確にしているわけではないので、その辺りは曖昧にして読者の想像に任せたのかもしれない。『冬虫夏草』には具体的な地名が出てくるので、実際に綿貫の旅を辿ることが出来る。冬虫夏草の地図
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村田エフェンディ滞土録
📱電子書籍(新潮文庫版):新潮社(2023年1月30日配信)文庫本:新潮社(2023年2月1日発行)
📱
文庫本:角川書店(2007年5月25日発行)
単行本:角川書店(2004年4月30日発行)
初出:「本の旅人」角川書店(2002年11月号~2003年10月号)
✅新潮文庫版は「あとがき――あの頃のこと」を収録


私は人間だ。およそ人間に関わることで私に無縁なことは一つもない
1899年、トルコに留学中の村田は毎日下宿の仲間と議論したり、拾った鸚鵡に翻弄されたり、神様の喧嘩に巻き込まれたり…それは、かけがえのない時間だった。✅「家守綺譚」とリンク
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