ナイティンゲールの梟

2015/12/28

小説


「考える人」 新潮社(2015年夏号~2016年冬号)
※連載終了―書き下ろしを加えて単行本刊行予定


ナイティンゲールの名前が、遠い日の友の記憶を呼び覚ます。

  • 水辺をどう守るかという話
  • 風景に小舟が入っていくことと、完全性についての話
  • 風景の調整と見守りについての話

 主人公・阿方由記子(あがたゆきこ)は、若かりし頃、英国のオークァム・ウォーターという貯水池周辺の環境を保護するための団体で、ボランティア・スタッフとして活動していました。
 今から二十年ほど前、阿方はある市民団体の招待で、英国の湖とそこにかかわる人々についての講演をすることになりました。講演を終えた後、聴衆のひとりからある絵本を手渡されます。その絵を描いていたのは、偶然にもかつて同じ「塾」の同窓生で、絵本を手渡したのはその同窓生の姉であり、絵本の著者でもある人物でした。
 後日、阿方はその姉に連絡を取ります。画家である弟の消息などを話しているうちに「ナイティンゲール」の名前が出て、阿方はさらなる運命のようなものを感じることになります。
 阿方にとって「ナイティンゲール」は、かつての懐かしい思い出に触れたり、〈日常をいかに深く生きるか〉という課題を考えたりするときに外せない、大きな意味をもつ名前なのです。キーワードは「nursing」。園芸用語の「養生」も、看護する行為も英語では同じです。
「ナイティンゲール」がいったいどういう人物だったのかという謎を少しずつときほぐしながら、主人公とその仲間たち、そして英国で見た豊かなる自然とのかかわりを紡いでいく、梨木さんの意欲作。
「Webでも考える人」より抜粋