家守綺譚

2006/10/01

小説


文庫本:新潮社(2006年10月発行)


単行本:新潮社(2004年1月発行)

家を、守らねばならない。友人の家なのです。

亡き友、高堂の家の守をしている綿貫征四郎は物書きを生業として暮らしていた。湖からの疏水が流れ込む家で死んだはずの高堂と言葉を交わし、犬のゴローと隣のおかみさんの世話になり、サルスベリに懸想をされたり、タヌキに化かされたり、異界の不思議な出来事に邂逅する。

※文庫本は「烏蘞苺記(やぶがらしのき)」を収録している。



☆作品に登場する植物など

サルスベリ
夏から秋にかけて咲く
サルスベリのやつが、おまえに懸想をしている。

サギ
小さな白サギのコサギ

都わすれ
ミヤマヨメナの園芸種で春に咲く

ヒツジグサ
未の刻(午後二時頃)に咲く睡蓮

ダァリヤ(ダリア)
ダァリヤという呼び方は宮沢賢治の作品にも出てくる

ドクダミ
強い臭気がある

カラスウリ
花は白いレース状で夏の夜に咲く

ヤモリ
ヤモリは家の守と書く


竹の花は60年に一度咲くと言われる

タヌキ
付属自然教育園(東京都港区)に棲む野生のタヌキ

白木蓮
3月頃、桜の開花の前に咲く

木槿
夏から秋にかけて咲く

ツリガネニンジン
夏から秋にかけて咲く

南蛮ギセル
ススキなどの根元に寄生する

紅葉
赤塚植物園(東京都板橋区)


秋の七草の一つ


秋の七草の一つ

ススキ
秋の七草の一つ

十五夜
2013年9月19日(東京都北区)

ホトトギス
鳥のホトトギスの斑点模様になぞらえた

野菊
ノコンギク、ヨメナ、シロヨメナ、ユウガギクなど

ヘクソカズラ
悪臭がある

山芋
実ではなくムカゴ

ネズ
雌雄異株

サザンカ
花びらがバラバラに散る。

リュウノヒゲ
別名ジャノヒゲ、瑠璃色の実がなる

檸檬
都市農業公園(東京都足立区)

南天
雪を被った南天

ふきのとう
雌雄異株

セツブンソウ
2月から3月頃に咲く


稲村ヶ崎(神奈川県鎌倉市)

貝母
別名アミガサユリ(編笠百合)

山椒
山椒の芽生え


石神井川(東京都板橋区)

葡萄
都市農業公園(東京都足立区)

※写真は2013年~2016年に東京・神奈川で撮影


☆物語の舞台と時代背景


物語は京都と琵琶湖周辺が舞台になっていることはおおよそ想像できるが、明確な場所は示されていない。あくまで想像に過ぎないが、ポイントを整理し、物語の背景を考察して地図を作成してみた。調べてみると単に地名だけではなく、その土地の風土や歴史・伝説が織り込まれていて奥深いことに気付く。小説はエンターテイメントであるけれど、紀行文学の素地があるからこそ魅力が増している。なお、実際にモデルとなった梨木さんの仕事場は滋賀県守山市にあった。

物語の舞台

高堂の実家
◎様々な位置関係から京都市山科区安朱周辺の可能性が高い。琵琶湖疏水(山科疏水)の分水路が通っている。疏水だけでなく、分水路のあることがポイント。
「山一つ越えたところにある湖」
「家の北側は山になっている。山の裾には湖から引いた疏水が走っている。家の南は田圃だ。その田圃に疏水から用水路が引かれている。その水路の途中が、この家の池になっている」
「ここから南禅寺山麓までは近い」(高堂)

◎安寧寺川というのは架空の名称で、安祥寺川のことと推察する。疏水と立体交差しており、付近にはかつて洋館群があったらしい。
「疏水と交差するところ」
「安寧寺川に沿って洋館がいくつか並んでおり」

和尚の山寺
◎疏水の北側、四ノ宮周辺、小関越えの方角にあったと推察する。具体的な記述がないので位置の特定は難しい。
「疏水の向こうの山寺の和尚の所」

時代背景

◎文中からは明治時代後半の設定ということくらいしか推察できない。

琵琶湖第一疏水完成 ⇒ 1890(明治23)年
「疏水の先に電気工場が出来た」 ⇒ 蹴上発電所の運転開始は1891(明治24)年

◎本作品とリンクしている『村田エフェンディ滞土録』を参考にすると詳細を特定できる。

土耳古帝国のエルトゥールル号遭難事件 ⇒ 1890(明治23)年
村田が土耳古帝国留学 ⇒ 1899(明治32)年
村田が帰国 ⇒ 1900(明治33)年
青年トルコ人革命 ⇒ 1908(明治41)年

◎綿貫は村田の留学と同時期に高堂家へ移り住んでいると思われることから、1899(明治32)年~1900(明治33)年頃ということになる。

矛盾点
◎山科駅の場所または時期が矛盾する。旧線にあった旧山科駅は1879(明治12)年開業だが、現在位置より南に離れた場所だった。現在のJR山科駅は1921(大正10)年、京阪山科駅(旧毘沙門道駅)は1912(大正1)年に開業している。

「どの汽車も湖の西岸か東岸かどちらかを通ってくる」
「駅舎の南側は、旧東海道である」


家守綺譚の地図


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